茨城民俗学会代表理事 飯村 保
本会は昨年60周年を迎えました。創立は昭和38年7月で、初代代表理事を務めた外山善八氏、清宮裕氏と藤田稔氏の3名が発起人となり設立しました。翌39年には『水戸市史』編さんに協力して水戸市全域の民俗調査を行い、昭和40年以降平成のはじめ頃まで、文部省(現文部科学省・文化庁)や県の企画に協力し、鹿島臨海工業地区、筑波研究学園地区、県北海岸地区、鬼怒川・小貝川流域、霞ヶ浦周辺地区などの重点地区をはじめ、30数ヶ市町村にわたって総合的な民俗調査を行い、調査報告書を刊行してきました。県内で本会会員が調査に入らなかった市町村はないだろうといわれています。
その後も、生活様式の変化等により生活のなかの習俗などは失われつつあり、または新しいものに変化しており、国県の調査等は少なくなりました。
古くから行われている民俗芸能や大きな祭礼は、関わる人たちが中心となり継続する努力がされていますが、地域や生活のなかの一般的にあった祭りや習俗は危機に瀕しています。それらについて、「そういえばあったな」と話すことはあっても、詳細は記録されていないことが多いものです。
そしてコロナ禍もいまだあり、コロナ後の生活様式の変化は激しいものがあり、いろいろなことが縮小されたり省略されたり、コロナをきっかけに失われつつあります。
民俗調査に関しては、特に影響が大きく、経験のある話者からの聞き取りがしづらくなっており、民俗学調査研究の危機だと感じています。しかし、このコロナ禍での生活やその後の生活様式の変化カタチなどはほとんどの方が経験していますから、いまからでも調査が必要です。
現在は、NHKなどのメディアで「民俗学」という言葉を聞くことも珍しくなくなり、民俗そのものの幅が大きく広くなっていますが、民俗研究者や興味を持たれる方の高齢化や後継者の減少等は、他の民間団体と同じように少なからずあります。
とはいっても、個人ではやりづらい調査研究の発表や、出版などについては、会として応援していくことができます。各種の課題は、皆で協力・連携して知恵を出していくことで、自ずと乗り越えていくことができるとも考えています。
今後も、会員の皆様方と一体になって、茨城の民俗調査やその報告をしながら未来につなげていきたいと考えています。会員の皆様、関係団体あるいは支援いただいている皆様には、引き続きご指導とご支援ご協力をよろしくお願いいたします。(令和6年11月)